- 作品のなかであえて順位をつけるとしたら一番好きな曲って
あります
か。
敬称略
鈴木清生:
『白唇』が印象に残っています。最初の頃はベースの僕のフレーズと高橋君のキックのタイミングが違っていましたが、高橋君のキックのアクセントがかっこいいのでベースも全部それに合わせることにしました。そしてその合間を埋めるようにしてメロディーを組み立てていきました。
津田治彦:
やはり『鬼』だろう。全てにおいて完成度が高い。日本の音楽史上、他に類のない曲だ。花本は最後のリフ前のギターがいいと言うが他の部
分のフレーズは全部決められていて自分が自由にできる個所はあそこしかなかった。
花本彰:
『島へ帰ろう』という曲です。実はこの曲、『青い影』のよ
うなアレンジを
考えていたのですが、歌詞との関係でレゲエ調?の演奏に落ち
着きました。
いつか機会があれば初心に戻り、ハモンドオルガンで静かに弾
いてみたいです。
北山真:
なんといっても『不意の旅立ち』です。特に中盤から後半にかけての畳み掛けるような演奏は空前絶後。まさにグランドファ
ンクもブッ飛ぶパフォーマンスです。次点は『鬼』。
高橋直哉:『科学の夜』です。
『鬼』『白唇』『せめて今宵は』『殺意への船出partU』『雨上がりの昼下がり』と散々悩みましたが、ドラムを叩いている時の陶酔感からいくと、この曲が一番です。
ころんた:鈴木さんの『白唇』は、「新月全曲目解説」で花本さんによって、この曲はベースを聞くためといっても過言ではない、と書かれていますね。
音を出しながら、曲は作られていく生き物なのですね。
津田さんの『鬼』日本のプログレ史上最高傑作と評される曲です。鬼に関しては語りつくせないものがありますね。で、『鬼』ってなんだったのだろう、とまた元に戻ってしまう。えーと、津田さんのコメント部分に関しては・・・ノーコメント!
花本さんは、実のところやはり『鬼』ではないかと密かに想像していたのですが、いい意味で期待を裏切られました。『セレナーデ+新月』に収録されている曲ですね。ライナーによると、海に沈んでいくタケシが最後に見た夢が『島へ帰ろう』だと書かれていますね。
ハモンドオルガン奏でられる『青い影』のような『島へ帰ろう』は、花本さん自身の故郷への憧憬でもあるのでしょうか。
そして北山さんの『不意の旅立ち』を聞いていると、北山さんが演じるタケシくんの可愛い世界が次第に様相を変えて中盤から一気に壮大なオペラになっていくようなまさに大作ですよね。花本さんの好きな曲が『島へ帰ろう』で北山さんが
『不意の旅立ち』なんですね。バトンタッチの妙。
高橋さんを、悩ませてしまいすみません。メンバーにとっても、難しい質問ですよね。わたしたちファンが聞く側として「一番好き」と、メンバーが演奏していて「一番好き」な曲と、二通りあることがわかりました。『科学の夜』。ドラムを叩いている時の陶酔感・・ドラマーで、新月をコピーしている方で納得している方もいるかもしれませんね。
- 北山ソロ、新月BOXの進捗状況を教えてください
花本彰:
北山は自宅に簡易レコーディングシステム揃えてすこしずつ録音しているようです。
発売はBOXの半年後をメドにしています。
BOXへの新曲または旧曲の再録音に関しては未定。
僕はやってみようかという気持ちになりつつあるのでたぶんやると思います。(04.06.01)
-
新月BOX最新情報を教えてください
花本彰:
新月の写真を撮ってくれていたロックカメラマン故迫水正一氏の作品を、ぜひ使わせていただきたくて、その捜索をしていましたが、どうやら彼の膨大なフィルムは未整理
のまま、あの映像作家井出情児氏の山中湖スタジオで管理されていることが判明しました。その中に新月が残っているかどうかも分かりませんが取りあえず井出さんにお
伺いのメールをうったところです。(2月2日現在)
ころんた:ビジュアル関係の捜索がだいぶ難航しているとお聞きしてましたが、まずは写真の有力な情報がつかめたのですね。そこに、良好な状態で保存されている事を、切に期待いたします。
花本彰:
故迫水正一氏の奥様からわざわざ連絡をいただき、山中湖のスタジオから新月のネガ6本が見つかったとのこと。当時の
貴重なビジュアル資料が一番いい形で発見されました。彼女は僕が井出氏に連絡する一週間前に偶然、膨大なフィルムの中に新月という文字を見つけていたそうです。先
方もびっくりされていました。(2月8日現在)
ころんた:この連絡受けたらなんだか涙がぼろぼろ出てきてしまいました。果たして見つかるかどうか?という不安があるというお話でしたが、写真の方が待っていたとは。奥様も本当に驚かれたでしょうね。迫水さんの撮られた新月の写真も再び世にでる事で、まずは音源、そしてビジュアルと、ボックス、そしてライブアルバムがどんどんよい形になっていく流れが出来ていますね。この流れは誰にも止められませんね!
花本彰:
迫水暁子さんから正一さんの撮影された新月のネガが届けられました。6本150枚にも及ぶネガは全てモノクロ。PV撮影時に同時に撮られたものです。BOXなど、これからの表現物に使わせていただきます。感謝。(2月19日現在)
ころんた:デビュー当時でも音以外には、世に出ている数が少なかった新月の貴重な資料のひとつである写真が、やっと新月の元へ帰ってきた、という感覚です。厳選された写真を見ることが出来る日を楽しみにしております。
- 他のバンドとの交流はありましたか。
美狂乱とは2回、コンサートでご一緒しましたが、ドラムスの
佐藤氏とすこし言葉をかわしたこと、演奏がすごくタイトで良
かったこと、ギターの須摩氏が白いシャツに黒のベスト姿で座
って弾いていたことぐらいしか覚えていません。お互いシャイ
なのか、自分のことで精一杯だったのか、グループ間の交流は
なかったです。ライバル意識というよりプログレ同士の仲間意
識の方が強かったように思います。同類で安心(笑)。マンドレ
イクとは、同じライブ会場を拠点としていた時代があり、個人
的にもすこし交流があったりしてプログレというかロックバン
ド仲間では唯一、四言以上言葉を交わした仲でした。それ以外
の日本のバンドはまったくわからず。ムーンダンサーのレコー
ドは買いました。たしかB面1曲目にいい曲が入っていたような
。マジカル・パワー・マコさんとは、渋谷の「キッチンフジ」
で一緒にハンバーグ食べた記憶あり。あれは何の時だったんで
しょう。ワシも初老にさしかかり、うまく思いだせんのじゃ。
ころんた:美狂乱とは78年のイベントと、79年の高田馬場(LIVE&RECORDS参照)で一緒に演奏しているんですよね。
79年の高田馬場はわたしも行きましたが、佐藤さんのドラムはとにかくすごかったです。ひたすら圧倒されました。マンドレイクの話は北山さんがMCで触れていたと思います。マジカルパワーマコさんは、早すぎた天才というキャッチがついていたような気がします。ファーストを買い損なったのがいまだに残念です。ハンバーグの方が記憶に鮮明なんですね。当時、少しだけ年上のお兄さんたちだったメンバーも初老にさしかかっているのですねー。というわたしもきちんと年を追っていますが、すこしでも記憶が鮮明なうちに新月コーナー勧めましょう。
- ずばり、バンド名「新月」の由来は
花本彰:
なんとなく思いついた名前です。おおむね好評だったので
即採用。
広告界でバイトしていたこともあり、ネーミングのコ
ツはある程度心得ていました。2音節で濁音が入るというのが
覚えやすい名前のポイント。
ガンダムや
ベルリンなどもそうですね。
また、時代の気分や僕個人の嗜好
もあり、太陽よりは月、白よりは黒、英語よりは日本語という
ことで決まっちゃいました。
新月の日は集合意識と繋がりやすくなるという、
もっともらしい理由もあったような、なかったような。
ころんた:
覚えやすい名前、というセオリーがあるんですねー。
新月の夜は「あ、新月」とうれしくなって、呟いてしまうのですが、
新月といえばメロトロン、鬼、ギター、和、シンフォ、日本のプログレ初期の最高のバンドとキーワードが次々と浮かぶ比類ない、最高のバンド名だと思います。
- ずばり、新月のめざした音は
花本彰:
うーん、無我夢中で自分たちもよくわかっていませんでした。ただビートルズのように音楽ジャンルにこだわらず、自由に新しい試みができるバンドでありたいとは思っていました。実際個々のメンバーが日頃接している音楽は殆んど重複していませんでした。逆にそれゆえに、みんなの自己規制によって「新月の音」という枠組みが出来上がったのかもしれません。
ころんた:1979年発行のフールズメイトvol.9の新月インタビュー記事の要約です。花本さんが「ヨーロッパのロックはあくまでその国の音楽でしかないわけで、僕らは日本にいるのであって、日本の風土や日本人の記憶の中にあるファンタジックな要素や日本的な土壌からマテリアルを探すことが最も必要と感じた」
とをおっしゃっていて、当時すごく感動した覚えがあります。クリムゾンが好きだから、ジェネシスが好きだからこういうふうにやっていこうではどうしようもないと感じた、という花本さんの発言に新月の姿勢が現れていたと思います。
- 「和」へのこだわりへのきっかけはありますか。
花本彰:
「オリジナリティ」へのこだわりはあっても「和」へのこだ
わりは特にはありませんでした。確かに「鬼」や「竹光る」(
正式には未発表)は日本の伝統音楽の旋法やその意識の引用が
テーマでしたが、他の曲に関しても日本的な要素がもし感じら
れたとすれば、それはたまたま新月という変調器がその回路を
持っていたということだと思います。
ころんた:
和ありきではなくオリジナリティありきなんですね。フールズメイトのインタビューにある、日本的な土壌からマテリアルを探す、という発言はそれが新月のオリジナリティの追求であり、結果として和がついてきた、ということでしょうか。
- 箱根ロックウェルスタジオでの制作時間は200時間とも300時間とも言われていますが、実際はどのくらいの時間を要したのでしょうか。
花本さん
:
延べ30日間です。正確な時間数は分かりませんが、予定より大幅に膨らんだのは確かです。プロデューサーの塩次氏には大変な迷惑をかけてしまいました。北山の記憶によると宣伝費にまで食い込んでしまったようです。まあ途中でやめるわけにもいかず、納得のいくまでやらせてもらえました。感謝しています。
ころんた:当時の日本のプログレッシブバンドとして新月がいかに恵まれた条件でレコーディングを行ったかが、いくつかのテキストに書かれていますが、バンドが納得いくまで行えたがゆえに「新月」が今も傑作として在り、また聞かれようとしているわけですね。
花本さんのオリジナルマスターへのこだわりがわかるような気がします。ロックウェルでのレコーディング風景の写真がこのサイト内にありますので、まだ見ていない方は探してみてくださいね!
- メンバー共通の趣味ってありましたか。またみんなでお酒を
飲みに行く
とか。
花本彰:
大人の世界でした。それぞれの生活があるのでバンドのリハ
やライブが終わり、反省会も済むと「それじゃあ」と解散。し
かしさもありなん。バンドの練習量はとてつもなく多く一週間
のうち六日は一緒に行動していました。正に音楽への奉仕の日々でした。
また当時のみんなはアルコールがこの種のインスピ
レーションを鈍らせるとわかっていましたから、自宅に戻って
からもその音楽的テンションを維持しながら曲作りや練習を続
けるために寝る前まで酒を飲みませんでした。それを自分に課
していたわけではなく、そうしたかったのです。「新月」とい
う共同体の魅力は正にそこにありました。決して羽目をはずさ
ないロックバンド、これが「いいじゃん、のろうぜ」的バンド
に対する僕たちの確固たるスタンスであり、誇りでもありまし
た。
ころんた:これを読んで、やっぱり、とうれしくなった方たちが多いのではないでしょうか。完璧なものは傷がつかない。完璧なアルバムだから今も聞き続けることができる。それは新月の確固たるスタンスによって作り上げられたものだからなんですね。わたしたちは新月のファンで本当に良かったですよね。
- メンバーお互いどう呼び合っていたのですか?さんづけ?く
んづけ?呼
び捨て?
花本さん:
僕の場合は「津っさん」「北山」「しずお」「高橋君」でした
。オモロッ。この質問最高。
ころんた:北山さんの方が花本さんよりお兄さんなのに呼び捨てで、年下の津田さんがさんづけなんですね〜。なんかオモロッ。北山さんのことを小熊さんが「まこっちゃん」と呼んでいたのをなんとなく覚えているんですが。で、花本さんは皆さんになんて呼ばれていたんですか?
花本さん:
高橋くんは「花本くん」その他のメンバーは「花本」です。
ちなみにPmodelの平沢進氏は僕のことをなぜか「花ぽん」と呼
んでいました。
ころんた:メンバー全員がどう呼び合っていたか知りたいですね。たかはしくんとはなもとくんはお互いくん同士で呼び合って、きたやまとはなもとは呼び捨てあって・・。
オモロッ。平沢さんのイメージって勝手に固い雰囲気を想像していたのでなんだかほのぼのします。
- メンバーの好きな食べ物を教えてください(ありきたりな質問、だけど知りたい)
花本さん:
当時は食べることは二の次でとにかく音楽一本でした。したがって美味しい不味いの基準は絶対評価ではなく、ただ本人が食べ慣れてい
てなんとなく好きという程度でした。みんなの好きだったものをひとつ思い出してみると、花本 ちくわの磯辺揚げ 津田 グラタンなどのチーズ系 高橋
ケンタのフライドチキン 北山 烏賊全般 鈴木 彼の場合オレンジジュースしか思い出せない
あ、一時、飲むサロンパス、ダッツのルートビアが流行りました。流行らせたのは北山か?
ころんた:ころんたはここにあがっているもの全部好きです。
- 劇団インカ帝国とのかかわりは。また、劇団インカ帝国へオリジナルの曲を提供したことがありますか?
花本彰:
僕が北山と知り合った時、彼は既にこの劇団の音楽を担当していました。この劇団は天才的才能を持つ作・演出家伊野万太を中心に結成され、池袋のシアターグリーンやラフォーレ原宿等で公演を重ねていました。後期に上演された「浪漫風」では津田と僕がステージに作られた竹林の中で演奏したのを覚えています。北山はもっぱらテープのオペレートを担当していました。
劇団インカ帝国では北山の楽曲を中心に多くのオリジナルスコアが使われました。「
茜さす」「魔笛冷凍」(北山曲)「浪漫風」(花本曲)もその一部です。
ころんた:劇団インカ帝国とのかかわりは、北山さんがアクターで新月が音楽サポートしていたのではないかと思っていたのですが、北山さんも音楽担当だったのですね。初めて「浪漫風」を聞いたときわたしがイメージしたのはまさに竹林だったのです。曲の力を感じます。実際にステージ上での竹林で演奏されたんですね。新月の楽曲って聞くと歌詞があるなしに関わらず映像が浮かぶんです。視覚にくるのです。劇団とのかかわりと、もともと新月が持っている絵画的映像的要素が楽曲に現われているんですね。それにしても、竹林の中で演奏される「浪漫風」見てみたかったです。
- ジェネシスフォロワーと言われることについて
花本彰:
僕自身はジェネシスをあまり聞き込んだことがないのでよ
くわからないのですが、確かにアルペジオの重ね方や北山の
ステージアクトからはジェネシスを連想されても仕方ないかと
は思います。
初期の頃はジェネシスに限らず、他のプログレバ
ンドのかっこいいリズムなどを自覚なくのほほんと流用してま
したから、しいて言えば新月は「プログレフォロワー」だった
のではないでしょうか。
ころんた:
プログレ、ロック、それに限らずカッコいいもの、にあこがれて、それがすきですきでたまらないもの、を目標にし近づきたい対象を持ってる事自体カッコいいですよね。
あの当時は、クリムゾンの美狂乱、ジェネシスの新月、でしたね。
クリムゾンもジェネシスも大好きですが。
高田馬場BIG・BOXのライブを運よく見ることができた幸運な人間ですが、ライブ見たとき、少なくとも、それぞれのフォロワーではなくて、美狂乱がカッコいい、新月がカッコいい。でした
- わたしは「光るさざなみ」のライナーで、北山さんがロッククライミングの世界に入られたことを知ったのですが、なぜ、ロックミュージシャンから、ロッククライマーへ転身されたのですか
北山 真:
「それはロックを極めるため
です。言い換えればロックを超えるため。超えるためには登ら
ざるを得ない。有名なロックンロールの曲にロール オーバー
ベートーベーンという曲がありますが、正にその心境です」
ころんた:
超えるために、登る。
あらゆるシーンであてはまる言葉ですね。明確にして、深い回答ありがとうございました。
わたしは、当時ビジュアル的に北山さんのファンでした。北山さんのステージアクトは何より楽しみでしたし、髪型、衣裳がプログレバンドらしからぬ(失礼)かっこよさでした。
新月解散後、まったく情報を得られなかった(得なかった)わたしは「光るさざなみ」のライナーで、はじめて北山さんが音楽の世界からロック・クライミングの世界へ入られたことを知りました。
ロッククライミングの世界で第一人者となりながら、でも「光るさざなみ」での変わらぬ歌声、曲、詞。道はなんでもひとつしかないわけではないということを、北山さんから学んだ気がします。
- 人に自慢したいプログレ系お宝レコードは何かありますか?
花本彰:
あり。ニューヨークロックンロールアンサンブルの「リフレクションズ」です。作曲
は全曲ギリシャの作曲家マノス・ハジタキス。映画「日曜はだめよ」の音楽で知られた人です。NYRRAは「ブランデンブルグ協奏曲」を歌物にして名が知れたバンド
(青い影フォロワー)。マノスの緻密なスコアを忠実に演奏しただけのアルバムですがオーボエ(メンバー)等の木管をこれだけ効果的に使った作品は他には見当たりま
せん。是非CD化したいものの筆頭です。
ころんた:CD化されてないのですか。プロコルハルムフォロワーではなくて、青い影フォロワーというあたりで、なんとなく想像つくのですが、花本さんだから知りえるお宝のレコードですね。
- 詞や曲はどんなときに出来るのですか。また、詞が先、曲が
先、という順序はあるのですか。
花本彰:
僕の場合例外なく曲が先です。データを元に太陽の黒点が
多い時期に音楽的傑作が生まれるという地磁気説をたてた方(
名和秀人著「大作曲家霊感の謎」)もいらっしゃいます。詞や
曲はどんなときに出来るのか?それは人間にとって永遠の謎か
も。あ、締め切り間際あるいは直後に出来ることは確かです。
いいわるいは別にして。
ころんた:月や太陽による作用って、いろんな方向から仮説が立てられているのですね。
人類永遠の謎をついついなげかけてしまいました。
で・・そうかあ。締め切りってたいせつなんですね、何かが生まれるためには(ころんたのひとりごと)。
- アルバム「新月」のジャケットの少女はアリスですか。メンバーがイメージしたもの
なのですか。
花本彰:
少女が月面宙返りをきめているイラストは北山の友人の方が書かれたものでバックは漆黒でした。
裏ジャケは水色地の上に銀色の不思議な形の物体が描かれていました。
のちにビクターのデザイナーの方が新月の文字と月面写真を追加されました。
裏ジャケはメンバーの写真があった方がいいだろうということでビデオ撮りの際の写真に差
しかえられました。
イラストの少女がアリスだったかどうかは残念ながら覚えていません。
違うとは思いますが。
ころんた:裏ジャケの銀色の不思議な形の物体・・どんなものだったのでしょう。
CD盤では、裏ジャケは、写真ではなく、イラストの少女の一部になっていますね。
アナログ盤を知らない方のために説明すると、裏ジャケは、正面から撮った「鬼」の演奏中の写真が3分の2の面積を占めています。
正面から薄物の白装束に白足袋の北山さんが、ちょうど雪が降るイメージを、手のひらを自分に向けてひらひらと上下させているところをとらえた写真で、左側から小久保隆さん、津田さん、正面が北山さん、ドラムセットに隠れてしまって高橋さんはちょっと影になっていて、鈴木さん、花本さんが写っています。
北山さんの、ちょうど頭上にあたる部分に「新月」のロゴが黒いバックに月が浮かぶように印象的に置かれています。
下3分の1は、やはりメンバーの演奏中の写真のそれぞれのアップが写っています。
北山さんはメイクをしていて、アナログ電話の受話器を握って歌っているので、
「少女」の演奏です。
上段左から津田さん、北山さん、高橋さん、下段左から小久保さん、鈴木さん、花本さんです。
この写真もBOXに収められるとうれしいですね。
※花本さんに確認したところ、この裏ジャケはプロモーションビデオを撮影したときのものだそうです。
ちなみに内容は、
「鬼」「せめて今宵は」
「少女は帰れない」の3曲です。
「鬼」はあの白装束に白塗りメイクで、白のかつぎをかかげて登場する北山さんがさっとそれをはらって曲がはじまり、ビジュアル的には、北山さんの演劇的世界を全面的にフューチャーし、バックで演奏するメンバーの顔をあえて写さずサウンドのみに絞っているところが「鬼」という世界を効果的にしてるそうな。バックで演奏する他のメンバーはあえて顔のみカメラからはずれ、演奏しているギターの指先やキーボードを弾いている指先のみがアップされている画像だそうです。
フルート部分では竹笛を吹いているそうです。小久保さん参加。間奏部分で、歌詞が画面いっぱいにかぶって書かれていたそうな。
「せめて今宵は」はベストスーツでノーメイクの北山さんがうたいあげ、それでも静かに北山さん独特のパフォーマンスが見られたそうです。
「少女は帰れない」では、フルメイクの北山さんが、あのアップテンポにあわせてマスクや電話や赤いくつを使っての早がわりさながらの小さなお芝居のようなステージアクトが見られたそうです。
プロモーションビデオのマスターも現在探索中だそうです。
- 花本さんはマンガを書いておられたのですか
花本彰:
「実は僕は80年代中期に「ぴあ」に「フタまんガーッ」という2
コママンガを「ザ・テレビジョン」に、「まがっちょる」という6
コママンガを連載していました。」
原画はすべてあるので
このコーナーを作ったりして。
するとここが一番人気でそうで
やだけど。
ころんた:
再び花本さんのマンガを読みたい、という声があります。
はっきりいってころんた、ファンクラブに入ってませんでした(入りそびれた、それでもファンかい
!という声は別として)。
ファンクラブ会報誌に花本さんの漫画が掲載されているのを知り、後から結構悔しい思いをしました。
花本さんが漫画をかいておられたことすら知らない人も多いと思いますので、いずれ連載を検討したいとは思っております。
- 新月の歌詞の中には「眠り」という言葉が多く見受けられますが、これ
は何かオカルティズムとの関連があるのでしょうか?回帰と再生、のような
なものを感じたのですが。それとも、若いうちはとかく眠いものですが
自然に出てきた単語でしょうか(しょーもない質問ですみません)。
花本彰:
表現は全て、受け手のインスピレーション領域で結実するも
のですから、作家の考えを鵜呑みにすることは、受け手の中で
せっかく膨らもうとしていた萌芽を摘み取ってしまうことにな
りかねません。しかし作家の意図も「参考にする」程度に留め
れば実害は少ないかもしれません。
僕の解釈では新月の歌詞に現れる「ねむる」という言葉は、
何かを「封印する」という意味であったり「日常の感覚世界と
はちがう世界、ちがう次元に入っていく」という意味であった
りすることが多いように思います。
もちろん爆睡するという意
味で使われることもあるようです。あとは作者の弁を待ちまし
ょう。あ、僕???
ころんた:
国語のテストで教科書に切り張りされてる作品にむかっ
て、作者の意図を述べよ、って作者にもわかんないぞって質問でした。
すみません。
歌詞の単語を固定化するのは、聞き手であるわたしたちにとっても意味のないことでした。「ねむり」、「ねむれ」という歌詞を北山さんのボーカルでまどろみながら聞けばそれでなんの解釈も必要ありませんね。
聞き手が歌詞から受けるインスピレーションは100人いたら100通りだし、分析は無意味ですね。
- 新月BOXの内容、イメージ等についてさしつかえない範囲で教えてください
花本彰:
まだ内容や発売元などは流動的でお話できる段階ではない
のですが、僕個人のビジュアルイメージははっきりとあります
。
AタイプはDVDのトールボックスと同じ大きさのパッケージに
写真や資料の冊子と2、3枚の盤が入っています。
Bタイプは、
いわゆるCD2枚組みのケースです。音がいいこと。映像も入っ
ていること。
この二つの条件を満たすべく現在動いているとこ
ろです。
ころんた:わたしは、誰よりも先に原稿を読める幸運な者ですが、これを読んで感動しました。
イメージをここまではっきり提示していただいて、新月BOX計画の具体性が身近に感じられ、うれしくてたまりません。
はっきり言って、資料が極めて少ない新月の音源、写真、その他テキスト、そして映像。
最近のファンの方は、新月メンバーの顔さえ知らないと思いますので、条件のひとつである映像はファンなら誰もが待ち望んでいたものではないでしょうか。
当時実際にライブに行ったファンでしか知らない、北山さんのステージアクトは、ライナー等の文言で、断片的には伝えられていますが、当時のアングラという言葉が生きていてた時代の、演劇とロックという2つの手段が完全に一致した表現だったと思います。
わたしも絶対にもう一度見たいです。
CD化されたオリジナルアルバム「新月」以外に、現在音源を入手された方は「セレナーデ+新月」「赤い目の鏡」の2つのライブアルバムだと思いますが、聞かれた方は十分にご承知のとおり、カセットからおこした状態の悪いライブです。でも、新月を求めていたファンは、どんなに音が悪くても、このライブを繰り返し、繰り返し、聞いたはずです。
新月がライブの録音をするなら最高の状態、最高の機材、
でと考えていたのにも関わらず、当時実現しないまま、実際入手可能な音源として出回ったのがこの2枚だったということ、しかし、それでも音が悪いのを承知で、新月の音源を少しでも得たいというファンの思いを新月は知ってほしいです。
現在BOXへ向けて動いているというお話ですが、花本さんがイメージしているBOXが早く現実化するのを楽しみにしています。
・・・って、これって相当あおってる?
- 新月BOXの計画はいつごろ、どなたからの提案なのでしょうか
花本彰:
ファンクラブ会長である小熊一実氏が自身のグループ「文学
バンド」のCD化にむけて動いている中で出てきた話です。
現在
「新月」のCDを出してくださっているマーキーさんを含め、ど
んなかたちが一番いいのか検討中です。
スタジオで収録した未
発表音源とライブ音源は1/4アナログテープであるはずなので
現在捜索中。1/4アナログマスターもビクターの倉庫で無事発
見されました。
ころんた:
「文学バンド」は本当に楽しめるアルバムでしたので、CD化、楽しみです。
新月のライブ音源があるのですか?
↑で実現してないのではないかとコメントをつけてしまいましたが、条件が整った環境で録られたライブを聞くことが、出来る可能性があるわけですよね。
未発表音源は幻の2ndアルバムに収められるはずだったものでしょうか。
雑誌で「新月のセカンドアルバムの名は『竹光る』」と発表されて、その発売を心待ちにしていたのですが、解散によりそれもかなわず、今20数年たって、やっと願いが叶うかもしれないのですね。
早く発掘されるといいですね。
アナログマスターが無事発見されてよかったです。すでにマーキーで発売されている盤とは違う形で再び世に出るのでしょうか。
- BOX計画とリンクして、再結成、ライブの予定はありますか
花本彰:
可能性はありますが鈴木と高橋くんとの連絡がまだとれていないので未定。
もし万が一ライブをどこかでやることになった場合はフィルムなどの映像が大きな位置を占め
ることになるでしょう。
ころんた:
マーキーの「赤い目の鏡」のライナーによると、ABC会館でのライブの模様が撮影されていたとあるので、3面マルチスクリーンのライブが見られる可能性があるわけですね。
北山さんのステージアクト、花本さんのメロトロンの洪水、津田さんの美しいギター、そして鈴木さん、高橋さんの鉄壁のリズム隊の、目前で浴びることが出来るかもしれないのですね!