メノウ東京スペシャルライブ!スーパーグループ北山真バンド

2019年11月24日「アトリエ第Q藝術」




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11月24日(日)竹場元彦さんの命日に開催された「メノウ東京スペシャルライブ!」に行ってきました。
会場は成城学園前から徒歩数分の場所にある「アトリエ第Q藝術」です。
わたしは方向音痴なので(最近になってやっと迷わずシルエレに行かれるようになったレベル)余裕をもって早めに出たのですが、迷わず着けてしまい開場まであとまだ20分以上も余裕がありました。
瀟洒な建物の前は敷石のある小さなお庭で、「Quo Vadis(クォ・ヴァディス:ラテン語で「(あなたは)どこに行くのですか?」。ネロ帝時代の物語のタイトルで、コドモの頃「少年少女世界の名作文学」で読みました。)と書かれている木の看板が目に入り素敵です。

庭に入ってちょとここで待とうかな、と一歩進んだ瞬間目に入ったのは入口前に集い談笑する北山真バンドメンバー全員!北山さん、花本さん、津田さん、桜井さん、林さん。
メンバー皆さんが入口前に陣取り通る場所などなく入れないぢゃん。小心者のわたしがこの中を突破できるわけがなく嵐の中の小鳥のようにおののいていたのでした(誇張あり)。

どうしようかと思いましたが、仕方ないのでそっと門の反対側の壁ぎわにじっと立って暫く身を潜めていたのですが、通りかかる品のよい成城の方々には不審人物としか思われず、自分でも何をやってるのかワケわからなくなり、わずか数分で耐えきれず意を決して庭に入りました。

門を入ると桜井さんに気づいていただき、へこへこしながら庭に入り、メンバーみなさんの写真を撮らせていただきパチリ。
ここで津田さん花本さん北山さんが「タケバとどうやって知り合ったんだっけ?」などと会話している内容が耳に入り「薔薇卍」というタケバさんが所属していたバンドの名前が津田さんから出ていました。

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まだ開場まで時間あり、どうしようかなと思いつつ未知の場所の上まだお客さんが誰もいないので緊張します。
幸いここでヒロポンが到着したので開場まで話しをしながら待ちました。
津田さんヒロポンは幻想文学などの話しで盛り上がってます。
やがて、わたしたちの後ろにもお客さんたちが列となり、開場時間になったので会場に入りました。

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こじんまりとした素敵なアートスペースで、タケバさんと親交のあったアーティストの皆さんの素晴らしいパフォーマンスをごく間近で観る事ができました。
第一部が、岡佐和香さん(dance)アンドレ・バン・レンズバーグさん(g)香村かをりさん(韓国打楽器)によるメノウ東京チーム1、細川麻実子さん(dance)柚楽弥衣さん(vo)近藤達郎さん(key)によるメノウ東京2チーム、北山真さん(vo)、桜井良行さん(b)、花本彰さん(key)、津田治彦さん(g)、林隆史さん(g)による、ブラインドフェイスに勝るとも劣らない(劣るか)スーパーグループ北山真バンドです。
北山真バンドは二番目の出演で、主催者の方から「新月」とご紹介がありました。

ダンスと音楽によるパフォーマンスの鑑賞は、もう何年も前になりますが、九段下のイタリア文化館で開催されたイベント以来です。
今回は大きなホールではなく、この「アトリエ第Q藝術」でメノウ東京チームによるダンスと音楽による表現を、息遣いまで聞こえそうな空間で鑑賞出来て本当に嬉しかったです。

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北山真バンドは各メンバーがそれぞれタケバさんの思い出を、曲の間に語りながら、三曲演奏しました。
先ほどの開場前の皆さんの雑談でも話題になっていたのですが、かなり意外だったのは、北山さん津田さん花本さんの三人が、異口同音に「いつのまにか竹場がいつも傍に居た」という印象で誰も竹場さんとの明確な出会いを、思い、だせないそうです。
新月時代から、鋭い突っ込み合いや毒舌がたっぷり仕込まれたやりとりを重ねてきた深いお付き合いのお三方ならではの、竹場さんの思い出話は、会場の皆さんの笑いをさそっていました。

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北山さんからまず、新月一時活動停止後に発表した北山真ソロアルバム「光るさざなみ」から、このアルバムの共同プロデューサーでもある竹場さんがギターで参加した表題曲『光るさざなみ』を演奏しますと紹介がありました。

但し、このアルバムの『光るさざなみ(バージョン4)』のギターは竹場さんが半年以上かけて演奏し(以前、こんな光景を感じたいと、川辺に座って文字通り「光るさざなみ」を眺めながら練習したこともあるとタケバさんから直接お聞きした事があります)苦労して編集したもので、過去数名が挑戦したものの成功した人はいない、という事です。
「光るさざなみ」版の再現は不可能な為、原曲(バージョン1)「動物界之智嚢」に収録)を演奏しますと説明がありました。

アルバム「光るさざなみ(北山真 with 新●月プロジェクト)」には、花本さんは参加されていませんが、タケバさんは『光るさざなみ』の自分のギター演奏が出来た時、絶対にダメ出しをされる、のを覚悟でおそるおそる花本さんに聴いて貰ったところ、「いいじゃない」と言って貰い、この時はほっとして本当に嬉しかった、と直接お聞きしました。

ピアノ、ギター、ベースだけによるシンプルな構成で演奏された、1998年に最初に発表になったバージョン4とも、2019年に発表になった「静かの海」版原曲とも違い、今回の『光るさざなみ』は、やはり追悼の思いが籠められたからでしょうか、柔らかな、光る、さざなみでした。

原点の歌詩を歌う北山さん。津田さん、林さんのギターが、桜井さんのベースが、花本さんのピアノが、心の中のどこか素朴な原風景を静かに細やかに暖かくわたしの眼前に描きだされ、心地よく穏やかな気持になった時、タケバさんも、いまこの場でにこにこしているだろうなと感じました。

『光るさざなみ』の演奏が終わると、北山さんから、最も親交の期間が長い桜井さんへ、まずはマイクが渡されました。

森村さんは竹場さんとは高校時代からの親友でバンドを組みその活動を通じて桜井さんと知り合いになりました。でもまだその頃は顔見知り程度だったそうです。

それがいつしか竹場さん主催のイベントに、桜井さんは清水一登さんと共に参加するようになり、そのうち竹場さんから一方的に深夜電話がかかってくるようになりました(桜井さん苦笑。
深夜だから10分くらいならいいよ、のつもりがいつもだいたい2時間は、竹場さんの長い話を聴く羽目にたびたびなり寝不足になったとか。「ここに『さびしがりやのあいつに送る』とありますが『めんどうなあいつに送ります(笑)』」

そして、Qui、北山真with真○日の林隆史さんへとマイクが渡りました。
林隆史さんは、イタリア文化会館のイベントに竹場さんからお誘いがあり、その場での新たな経験がたいへんに良い物でした(大意)と、短く遠慮がちに語られました。

お二人のお話中、津田さんはピックを銜えたまま、そっとギターをつま弾き続け、微かに、でもずっとずっとその美しい音色が静かに会場に流れていてこれも至福の時間でした。

そして二曲目はこれも竹場さんとの共同プロデュースアルバム「光るさざなみ」から『あかねさす』が演奏されると紹介がありました。
『あかねさす』は、林さん、桜井さんが参加された 「北山真with真○日」コンサートでも演奏され、まさに幽玄の世界でした。
北山真with真○日コンサートでも感じた事ですが、まず桜井さんのベースが奏でて描く水墨画のような、あかねさす むらさきのゆき しめのゆき のメロディを再び生で聴く事が出来る日が来るとは思っていなかったので、うれしくて仕方がありません。

北山さんの歌が遠い風景を映し出します。
花本さんのピアノが淡く美しい彩りを描きます。
津田さんと林さんのギターが交互に紡ぎ出す音色が輪郭を浮きだたせ、動画のようにその野の光景を変化しながら眼前に広げます。
しかし、淡い色彩のあかねさすは、間奏部分で林さんの力強いギターによって、遠かった風景がくっきりとはっきりと近くに見えてきました。
フィルターを通して額田王がうたう古代に思いを馳せていましたが、林さんのギターによるロックな『あかねさす』!が、そのフィルターを取り払い、今現在に同じような光景が活き活きと蘇り、このアートスペースにふさわしい、新たな『あかねさす』が現われたと思いました。

次の思い出は津田さんです。
津田さん竹場さんお二人のやりとりは、以前参加していたSNSで遠巻きに見ていましたが(稀に飛び火あり)、毒リンゴをかじり合うような?そんなやりとりが浮かぶような思い出話しをされて、苦笑しながらそれを聞くメンバーの皆さん。

ただ最後に津田さんは真顔できっぱりと「竹場くんの、人の本質を瞬時に見抜く才能は絶対的に信頼できました。
だから、竹場くんが知り合った素晴らしいアーティストの皆さんと、竹場くんと共にこれからどんどん新しい企画や活動をやって行こうという矢先に竹場くんが亡くなってしまい、残念ながらそれは叶わなくなりました(大意)」と言われ、それに対して花本さんが深く何度も頷いていたのが印象的でした。

北山さんが「では、一番竹場に被害に遭った花本(笑)」と言って花本さんへマイクを渡します。それを受けとった花本さんが「一番被害に遭った花本です(笑)」。

花本さん津田さん北山さんの共通認識はいつ竹場さんと知り合ったか定かではないとの事でしたが、デビュー前から新月を愛した北村昌士さんのフールズメイトと同じく、竹場さんのロッキンオンが、それぞれ新月を取り上げ盛り上げた事(津田さんからは「ロッキンオン」は渋谷陽一氏がプログレ嫌いだったのでタケバくんがかなり頑張って記事にしてくれた)というお話もありました。
デビュー後の11月に原宿クロコダイルで竹場さんのロッキンオン企画で新月のライブが開催された事、そうして竹場さんが新月を愛してくれて暮れた事、などが津田さん北山さんとの三人で語られました。 次に三曲目の『手段』の紹介がされました。
北山さんと花本さんの共作で「冷凍睡眠/Cold Sleep」(北山真with真○日)に収録されライブでも演奏されています。
その後北山さんと花本さんお二人のアルバム 静かの海 (北山真・花本彰)で完成した姿で収録されている曲です。
『手段』の演奏が最後の曲と紹介されて、時間的には仕方ないですが、さびしくもあの『手段』をこのメンバーで聴く事が出来るんだとわくわくしました。

スタンバイ。
メンバーの皆さん楽器を手にします。
演奏前の静かに張りつめた空気の中、花本さんはピアノに向かいメンバーに背を向けています。
いよいよ『手段』が演奏されるのです。わたしの中にも心地よい緊張感が走ります。

なんとその空気を突然寸断して追い打ちをかける北山さんのMCが。

「新月活動停止後、わたしと竹場で花本の悪口をさんざん言っていました」。
のけぞるわたし。いやおそらくみなさん全員。
鍵盤に指先をかける体勢になっていた花本さんの背中が明らかに苦笑してます。

「竹場は花本の才能はもうダメだ!おしまいだ!と言ってました」(うわあ)。
花本さんの背がさらに震えています。

「ですが、2008年に花本がサビを作った『手段』を聴いた途端、竹場は一転して、大丈夫だ、花本はまだやれる!と言いました。その『手段』を演ります。」(えーとぉ〜)

花本さんの背中はまだ苦笑しつつ、『手段』の演奏が始まりました。
とんでもない紹介から、一音が響いた途端一瞬にして切り替わるのがこのメンバーです。

気品あふれる詩、曲。『手段』。
新月ファンにとって大切な曲のひとつ『殺意への船出』のエピローグとして完成したこの曲が、北山さん、花本さん、津田さん、桜井さん、林さんによって、静かに、静かに竹場さんへ送られ、北山真バンドの演奏は終わりました。
惜しみない拍手が続くなか、メンバーの皆さんはステージから去って行きました。。

この後がメノウ東京2チームのダンス、ヴォイス、キーボードのパフォーマンスが披露され、このアートスペースから「はみ出した」表現に感動しました。

わたしは残念ながら一部のみの参加でこの後二部からの 直江さん、桜井さん、津田さん、柚楽さんの演奏を観る事が出来ず残念でした。

最後にわたしのタケバさんの思い出を語らせて下さい。
わたしは新月関連のライブでは決して泣かないです。これは信条というわけではなく、単純に新月、新月関連曲をライブで聴くと嬉しくて笑ってしまうからです。
ところが2008年に開催された北山真with真○日コンサート「約束の地」で『光るさざなみ』が演奏された時、新●月から北山さんが離脱した事を含め万感の思いがこみ上げて来て不覚にも涙してしまいました。

ステージ右に居たタケバさんがこちらを見ているような気がしていたのですが、見られていないだろうと安心していましたが、打ち上げの居酒屋さんで「『光るさざなみ』で泣いていくせに〜。」と肘でツンツンされたのが、ものすごく悔しかったです(笑)。

あと、新●月ファンサイトを見てくれていたタケバさんから、わたしへ、身に余るような言葉を頂いていますが、これは自分だけの宝物としてしまっておきます。

では、タケバさん、ありがとう♪いつかまた。

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