HAL&RING コンサート
2006年12月26日 初台DOORDS
2006年12月26日(火)土砂降り。
12月20日発売のHAL&RINGのファーストアルバム「ALCHEMY」発売記念コンサートが初台DOORDSで行われた。
HAL&RINGは、HALオリジナルメンバーと、RINGメンバーが合体したユニットで、2006年7月19日の新月ニュースでの、小久保さんからの、正式アナウンスにあるように、当初より、HAL、そしてRINGの曲をライブで、発表する目的で結成、同時に「ALCHEMY」と名づけられたアルバム制作が進行した。
HAL&RING単体のライブレポートなので、すんなりライブの感想だけを書けば良いのだが、、その前に、やはりどうしてもここで新月の名を出して、すこしだけ解説をしたくなってしまうのは、わたしのレポートなので、すみません。
「新●月●全●史」におさめられている「HAL」の音源は、新月ボックス制作のため、新月・新月関連過去音源発掘中、山梨にある小久保さんのアトリエの倉庫から、25年間ひっそりと眠っていた電通大ライブでのテープが発見され、そのテープと、鈴木さんが持っていたテープをカップリングしたもので、2005年12月16日、新月ボックスを手にして、「HAL/SERENADE」のアルバムから、初めて『ボーデンハウゼン』のオープニングが聴こえてきた時の瞬間の衝撃と驚きは、いまも聴く度新鮮に甦る。
その時同時に小久保さんのアトリエから発見された「RING」のテープが、新月コンサート開催と同時期に「魔術師の帝国」というタイトルで発売された。
このアルバムでも、ボーナス・トラックとして、HALオリジナルメンバーである津田さんゲスト参加による、HALナンバー『悲しみの星〜魔人カルナディスの追憶』を聴く事が出来る。
そして、HAL、RING音源の発見と新月コンサートが契機となり、メンバーが、HALの楽曲を新録音し再びきちんとした形で世にだし、ライブで演奏したいという、先の正式アナウンスどおり、行われたのが、この初台DOORSのコンサートである。
客層が一般のリスナーよりも、音楽関係者の方がやや多いような雰囲気があり、いつも行っているライブとは違う空気に、すこし緊張し、このライブが、やはり注目されているのを実感した。
ライブは2部構成で第一部はRING「魔術師の帝国」。
アルバムで聴いたときは、色彩ははっきりとまでは至らないが、淡い色彩のなか、風景がそれぞれのイメージの中に断片的に浮かんだ。
砂漠や、わずかにひらりと翻った衣の裾で巫女と知れる全ては見えない姿、、そして、かわいたさわやかな風。ビルの間の隙間を見上げたさきに見える青空。
RINGオリジナルメンバーの演奏によるこのアルバムは、若さのなかで、まだ地球が全て自分たちの手の中にある、あやつることができると信じていて、でもそれがどれほどの具体的な方法をもてばいいのか、たぶん、わからなかったから、風景はまだ、想像の域を出ず、だけでくっきりとはしていない。
今回のHALメンバーとRINGメンバーによって、演奏された「魔術師の帝国」は、地球をじぶんたちの手の中には入れる事は出来ないことを知ってはしまったけれど、でも、またこれから、あやつる方法を知っているアーティスト達によって、圧倒的な演奏力、そのパワー、アレンジにより、ふと、オリジナル曲を飛び越えて、まるで違う曲を聴くような、いきなり違う世界へと、情景がアルバムよりもより鮮明に浮かび、文字通り魔術師の帝国に紛れこんでしまうような、錯覚が随所にあった。そして、小久保さんのボーカルに、ほっとする。ああ、70年代だとひきもどされる。心地よい、RINGのライブだった。
休憩時間に会場内に流れるのは津田さんのPhonogenix「METAGAIA」。
そして、第二部は、いよいよHALオリジナル曲に、HAL&RINGによるオリジナル曲2曲が演奏され、ゲストの鎌田さん、花本さんが、何を演奏するのか、またそれによって、構成も変るはず、と、事前にいろいろ勝手に曲順を考えていた。
しかし、そんなこざかしい思惑など吹き飛ばすかの如く、これはとにかくロック・コンサートだ!とばかりに、いきなり『サー・ボーデンハウゼン』のイントロがはじまり、HALの曲を初めて聴いたファンへ再びあの衝撃が、ステージから投げつけられる。
かよさんのキーボードが、しっかり「凶暴」だったのがうれしかった。
『TRIPLET COLORS』でのギターベースドラム、そしてキーボードにこれは、まぎれもなく、HALそのものだ!と思った。
特にライブ前から、興味深かったのは、アルバム「ALCHEMY」の中で、ひときわ異彩を放つ『ALTERED STATES2』。
これはHALオリジナル曲ではなく、RINGメンバーであり、HALメンバーであり、セレナーデメンバーであり、新●月メンバーであるメンバーが作り、演奏し録音したHAL&RINGの曲である。
ライブの『ALTERED STATES2』は、セレナーデ時代の花本さんの曲『終末』からはじまり、花本さんのメロトロンが繰り返し繰り返し繰り返しいつ果てるともわからず『終末』を奏で、悲鳴のような、信号のような音と順番に演奏された。
ただ悲しかった。ただ、ただ、悲しかった。
そして、新月の曲を聴くときに、しばし見える映像が、このとき、なにひとつ見えなかった。わたしには、なにも見えないんだ、と、それがまた、悲しかった。どうしてわたしに映像が見えないのだろう。
ただ、奥底から、湧き上がるかなしみ、胸の奥からいっぱいに、ひろがってくる、かなしみ、これだけが繰り返し、繰り返しなんの映像も伴わず、ただただ、わきあがってきた。
わたしの目の奥に、何も映像が投影されなかったのは、あまりに深いかなしみを、情景としてとらえることができなかったからもしれない。そんなちからがなかったからかも知れない。
長いメロトロンのオープニングから『ALTERED STATES2』本編へ。
アルバムを聴いた時に感じた、この『終末』にも通じる、なつかしいような感覚、ひなたのような、でも物悲しい感覚が胸漂いながらも、この曲の全編を多い尽くす、無機質感と「無常感」が、ライブではさらに増幅されて、いた。
ここでは、はっきりと、わたしには映像が見えた。でもこの映像は、なんだかわからない。
ここにわたしが見たものは、無数の、これは何だろう?きらきらと輝きながら細かい、細かい、破片がずっと天空から降り注いできた。
バックに流れる9.11の映像からの連想で、これはガラスの破片だったのかもしれない。
綺麗だ。
でも、綺麗だけど痛い。でも、綺麗だけど熱い。
それがガラスの破片であるならば、無数の数え切れないなにかを切り裂き傷つけ引き裂き血を流させながらずたずたにしながら降り注いできたのかな。
いや、それとも、無数の涙がきらきら輝きながら、降り注いできたのかな。
悲しみの、嘆きの、癒しのあたたかい涙。
でも、これは熱い。
あまりに深い悲しみ、嘆きは、亡くなったひとたちの上に、熱湯となって降り注ぎ皮膚を焼き傷つけながらさらに苦しめる。
このきらきらと輝きながら傷つけながら降り注ぐものは、地上からさらにさらに地中へとしみこみ、なにかを傷つけながら、また地から立ち上ってどこかへ帰っていくのだろうか。そして、また、いつか、降り注いでくるのだろうか。いや、二度と、降り注いではいけない。
綺麗なのは、それでも、それは人間がそうしているから、最後の良心が、善の部分が、輝いているのかな。
それとも、亡くなった人たちが、ひとりひとり、そのなかに宿っているからなのかな。
アルバムで聴いたときより、さらに、さらに、この曲は、「見なければならないもの」を教えてくれたような気がする。
そして、MCのあと、『OPEN BEFORE KNOCK』。ドアを蹴破り会場へ参上!の通りここでHALリーダー鎌田さんが、ショルダーキーボードで参加した。ほとんど、手の動きが見えないのに音が聞こえるというふしぎな演奏に目を瞠りつつ、この曲の後のMCで、このライブ前に、小久保さんが、鎌田さんを探して探して、「もう死んじゃってるんじゃないか」と思いつつも、ついに鎌田さんを発見したこと、それを受けて、鎌田さんが「後輩は大切にしましょう」と返して、会場内に笑いがおこる。
そして、圧巻『悲しみの星 〜 魔人カルナデスの追憶』。
「演奏力」そして「曲の力」というものを存分に、とことん、味わいつくす事ができたメドレーだった。
そして、ここに絶対にこだわっていは、いけないのだと思いながら、演奏しているのは、HALオリジナルメンバー全員であり、それぞれSERENADE、HAL、新月を体験したメンバーであり、そこにRINGメンバーが加わってのステージに、一種のタイムパラドックスを感じ、これは褒め言葉のつもりだが、得体の知れない、そして、想像不可の、でも、もしかしたら、既に見てしまった事のような、なにかわからないそんな大きなちからが圧倒的な演奏となって、ステージから会場全体を覆い尽くし、圧倒し、感動させ、わたしの魂を抜いていった。
素晴らしい演奏だった。ただ、ただ、すごかった。
全体的に、HAL&RINGと、HALのちょうどまんなかをとったようなイメージがあった。
これは演奏者がHALメンバーだけ、HAL&RINGメンバーだけであったらまたちがったかもしれないし、ステージに、演奏と連動して映し出される映像がまた、素晴らしくて、曲だけを聴いていたらとらわれがちなイメージを、ちがうかたちで、増幅してもらえたおかげかもしれない。
そして、当初、正直、なぜ花本さんがゲスト参加するのかな、と疑問にも思ったけれど、やはり、『ALTERED STATES2』の、メロトロン・ソロを聴いて、このメンバーでのライブを見る事ができて、心の底から、良かったと思った。
そして、HAL、HAL&RINGの曲はすべて演奏され、アンコールで再びステージに立ったメンバー全員で、いったい何をやるのだろうと、おもっていると、いきなり意表をつく曲が、さらに観客の度肝を抜いた。
完全に油断していた。
それは、アイアン・バタフライの『イン・ナ・ガダダヴィダ』!
HAL史を読めばおわかりのように、1972年、鎌田さんと津田さんの取り合わせとしては初のコンサートでフル演奏された記念すべき曲。
アンコールをやるのに、これ以上相応しい曲はない。そして、なにより、新月のドラムではない、高橋さんが前に出てきたドラム、それから鐘、とにかくそこに男のロックを感じて、ただただ、「ロック・コンサート」に行ったうれしさと、心地よい疲労感とある意味虚脱感、つまり、それだけ圧倒的なステージを体験してしまった者だけがもつ、贅沢を持ち帰りながら、再び土砂降りの中、会場をあとにした。
RING
-
プロローグ
- 白い巫女
- ピアノ・ソロ
- スームの砂漠
- マジック・レディー
HAL&RING
サー・ボーデンハウゼン
- 花の乙女たち
- TRIPLET COLORS
- ALTERED STATES II
- OPEN BEFORE KNOCK
- 悲しみの星 〜 魔人カルナデスの追憶
- イン・ナ・ガダダヴィダ(アンコール)
HAL&RING
津田 治彦
桜井 良行
高橋 直哉
松本 かよ
小久保 隆
ゲスト
鎌田 洋一
花本 彰
ちなみに、この日の興奮さめやらない感想が掲示板に書かれていますので、リンクはこのスレがなくなるまで、張っておきますね。わたしめちゃくちゃ間違えていますが。
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