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新月

月の話ではない。
「新月」というのは「セレナーデ」と「HAL」と「ベラドンナ」というバンドが合体した日本のプログレバンドで・・・などというライナーノート的なことはROCKのコーナーを見てもらう事として、熱風の吹くこの時期、思い出すのは学生最後の年と「新月」。
以前からのサイトをご存知の方はまた「新月」の話かよーと思うでしょうが、夏の熱帯夜、そして昼間の熱風が吹くと、大学4年の夏を思い出すのです。
と言っても残念ながら期待するようなお話ではないのであしからず(^^ゞ。

夏休み。
すでに卒論の準備が思うようにいかなくて、私の場合は文献以外に保管をされている資料の実測に、それが一般の家に保管されている場合、そのお宅まで行かねばならず、暑さと疲れの夏休みだった。
広尾にある都立中央図書館は有栖川宮記念公園の中にあり、この図書館に行くと、疲れたらちょっと公園を散歩したり、捨て犬に餌をあげるため、かといって地理が不案内のため、場違いにも近くの高級なスーパーに行って、ようやく犬にあげられそうな食べ物を買って戻って、おなじような事をしていたオジさん達と仲良くなったりした。

私はよくそこの公園のベンチに座って、ぼーっとしていた。
卒業後の見通しも何も立っておらず、短大を卒業した友人はすでに2年目でばりばり働いていて、私にはまぶしい存在だった。そして私は、もう四年生だというのに、きちんとした目的もないまま漠然とした将来のことをぼーっと考えていたのだった。
自分の居場所さえ、わからないぼんやりとした学生だった。
それは今でも変わっていないのだが。
そんな頃、深夜のFMで聞いたのが「新月」だった。
発売されたばかりのそのアルバムを、地元の新星堂に走っていってすぐ買った。
日本初のプログレッシブ・ロック・バンドの登場は本当に嬉しかった。 宇宙や星を思わせるメロトロンの美しい音が、夏のいらいらを吹き飛ばしてくれた。

そして、当時の「フールズメイト」の新月のインタビューの中に確か「クリムゾンやジェネシスが好きだから、あんな風にやろう、では駄目だと思う。
ヨーロッパのロックは当然その国の音楽であり、自分達は日本にいる以上、日本の風土、日本的な土壌からマテリアルを探すことが必要だ・」というような意味の事が書かれてあった。

自分の居場所をきちんと見極めたバンドだと思った。
レコードを何度も、何度も聞いた。
擦り切れて、針飛びするまで聞いた。ライブにも行った。
そして新月は解散した。
私も公園のベンチから立ちあがる時がきた。

だから、真夏、こんな湿気を帯びた熱風の吹く日は、ベンチに座っていた私を立ちあがらせてくれた新月のメロトロンを思い出すのです。

こんな、熱風が吹く日は。

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